家族の条件〜幸せをつなぐ道のり「プロローグ」

¥932(税込)

商品説明


婚姻届を出したら「不受理証明書」をいただきました。私たちは男女の結婚のつもりですから、すんなり受領してもらえると思ったのですが…。不服申し立てをすると、戸籍上、夫を自称しているあなたは「女性」ですから女性同士の結婚は「不適法」だと宣告されました。確かに戸籍は女性なのですが、社会的には男性として生きており、妻と子と家族として暮らしたいのです。性同一性障害の人は、特例法で一定の要件を満たすと戸籍の性別を変更できる時代にあります。ただ、そのなかの「手術要件」がひっかかります。なぜ体にメスを入れるなら、男になれて、ありのままの姿で生きる覚悟をすると「女」の性別を押し付けられるのか。手術をする、しないで、セクシャル・アイデンティティーが決められる制度に「ちょっと待った!」と声を上げました。生殖器の切除手術なしで性別変更を求めた申し立ての審判結果が全国ニュースで流れ、私は「手術をする度胸のない」「ワガママ」で「臆病な女」と言われます。手術が失敗して「死ね」ばいいのに…。とネットで叩かれました。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
(本文より) 
 
⬜︎ 死に損、生き得
 
私は「死ねば終わる」と何度も思いました。自分も楽になるし、私を苦しめた人が少しでも後悔するかな? そう思いました。でも、最後の最後にギリギリで悪魔が仕掛けている巧妙なトリックに気がつきました。そしてその罠からかろうじてもがき出た私は自分に向かって大声で「生きろ!」と叫んでいました。
 
死んだら終わるのは、私の命だけではありません。私が「夢描いた未来」が実現することなく黄泉に葬られてしまうことを意味します。私は「性別に束縛されず、その人の信じるところを自由に生きられる社会」の実現を信じています。その日が来ることに希望を寄せているから、忍耐強く待っているんです。でも、私が命を断てば、私はそんな未来を見ることはありません。私が死のうが、時代はそれでも「多様性を受け入れる社会の醸成」という方向へ進化を遂げていくと思いますが、その時死んでしまっていたら私は未来社会で自分が得られたであろう市民権と喜びを享受できません。 
 
私が問題を問題と認識しながら、それの改善・向上に加担しないならば、私は問題悪化の側に加担しているんです。私自身が、自分たちが住みにくい社会を作ってしまうということです。なんという皮肉。こんなチキンでは、笑い者にされてしまいます。私は、当事者として、男女二元論の窮屈さに甘んじることなく、性意識の認識改革に取り組むことから、決して逃げてはいけないと気がついたんです。
 
命を賭けるべきは、人生を強制終了することではなく、「信じているビジョン」への道を1つ1つ積み上げていくことだということです。遠く長い道のりが、想像されました。今でも「生きろ!」と叫んだ夜のことを思い出すと、食べ物が喉を通らなくなります。涙がこみ上げてきます。死の淵に追いやられているマイノリティが安心して存在できる場所を作ることは、私が人生をかけて取り組みたいことなのです。
 
今もたくさんの仲間が、自己否定の言葉を吐きながら、今の日本に生まれた不幸を呪いながら、遺書を書き終え、手に刃物を当ててみたり、飛び降りるビルを探して、あてもなく夜の街を彷徨っているのでしょうか。
  
一人孤独と戦っている人たちは少なくないと思います。この声が届くのが間に合って欲しいと願っています。私もかつて「なんで自分だけが?」そう思っていました。他に同じ道を通っている仲間がいることを知りませんでした。だから今、彼らが、同じような苦しみを背負って、青色吐息で這いつくばって人生を送っているかと思うと、心臓がギュッとしめ上げられます。
 
あなたは自由だ。自由に生きていい。制度も社会も、誰一人あなたの人生を制限なんてできないんです。あなたの人生なんですよ。あなたが許可したら、あなたはあなたの人生をコントロールする自由を手にするんですよ。誰かに拒否されたとしても、いいじゃないですか? 自分は死んだんだという気になれば、もう何も怖いものなんてありません。そもそも、誰かに苦しめられていて、今自分が不幸だというのは幻想です。他人のせいにして、自己責任を果たしていません。自分が納得いかない現実を、そのままで放置していながら、現実に甘んじている。それは自分自身がそう選んでいるだけです。
  
過去の自分に死んでください。今、あなたの過去をこれからのあなたと切り離してください。「今までの私ありがとう、さらば!」ってお別れしてください。あなたは過去の自分の責任を取る必要もありません。今まで不幸だったから、これからも不幸である必要はありません。今まで苦しんだから、これからも苦しむ人生とは限りません。今日から、変わっていいんです。この日を境に、あなたが新しいビジョン、世界観に生きるんです。そう伝えたいのです。生きていると得します。生きるということは、あなたの希望の社会に近づくということです。だから、生き得。 
 
私は人生の折り返し地点の40歳の誕生日、カミングアウトをしました。今まで周りの目を気にして、他人の評価のために自分の気持ちをごまかしながら捧げてきた人生を終わらせました。これからは自分の軸に沿って、自分が自分に正直か、そこに価値を置いて生きようと決めました。いうなれば、紆余曲折の末、人生半ばにしてようやく「自分らしさ」を取り戻したのです。
  
一体、私たちはいつの間に、誰かの価値観、基準のために自らを虐げて無理して生きるよう教え込まれ、それをまんまと信じ、自分が授かった人生を早々にギブアップしてしまったのでしょうか? あなたが赤ちゃんのころ、わがままし放題で、世間に何も貢献するようなことはしていないのに、誰しもが無条件にあなたを受け入れて、愛してくれた。あれは幻だったのでしょうか?

著者名


たかきーと

販売者


臼井崇来人

関連URL


http://amzn.to/2GoY7GD

書籍情報


製本サイズ:B6
ページ数:116
表紙加工:カラー
本文カラー:モノクロ
綴じ方:無線綴じ