スペシャルインタビュー 佐藤秀峰さん&佐藤智美さんが語るWebとオンデマンド製本の可能性

『海猿』『ブラックジャックによろしく』などのヒット作で知られ、漫画 on Webの立ち上げや『ブラックジャックによろしく』の二次利用フリー化など、漫画界・出版界に話題を振りまく佐藤秀峰さん。その佐藤秀峰さんと、『ムショ医』で知られる佐藤智美さんに「漫画onWeb」の立ち上げに至る経緯やWebの可能性、そして「製本直送.com」の感想についてお話を伺いました。

編集部とのトラブルから『漫画onWeb』誕生まで

──本日は宜しくお願いします。

佐藤秀峰氏

佐藤秀峰(以下、秀峰) 宜しくお願いします。
佐藤智美(以下、智美) お願いします。

──佐藤秀峰先生は出版社とのトラブルや漫画家の内情を公にしたことでかなり話題となりました。大ヒット作を連発する漫画家さんとしては異例のことだったと思います。

秀峰 はい。初連載がヤングサンデー(小学館)の『海猿』で、まずまずの人気でした。コミックスも売れていたのですが、僕としては正直終わらせたかった漫画でした。「前回の事故は10人規模だったから、次は100人規模。その次は・・・」という感じで事故がインフレしていってしまいまして、継続して書く漫画ではなく、ここで終わるべき漫画だと認識していました。ですが、アンケートは人気があったので続けてくれという編集部の意見と対立してしまいまして、『海猿』終了と共に講談社に移りました。編集部から裏切り者呼ばわりとかされてたみたいですけどね(笑)

──次に描かれたのが『ブラックジャックによろしく』。ここでのトラブルを公にしたことでかなり話題となりましたね。

秀峰 『ブラよろ』は取材が必要な漫画でした。そして薬の副作用の記述等、リスクが高い漫画でした。一度編集部が取材した内容が事実と異なる、と訴えられそうになったことがあったのですが、この場合「責任の所在は取材した編集部なのか、書いた作家なのか」という疑問に対し、原則として作家が取材内容に責任を持つべきとの回答をいただきまして・・・。だったら全て自分で取材しないと、という結論になりましたね。

──そうした中で条件面が合意できずに離れることになったわけですね。

秀峰 はい。その頃から原稿料ってなんなんだろうとか、疑問に思う事が沢山ありました。取材等を全て自分でやるとなると、週刊誌での掲載は非常に難しいですし、どうしても経費や制作費がかかってしまう。そうなると、それに見合う原稿料を希望するじゃないですか。これに対して、「原稿料は製作費じゃないです」という回答が来るんです。これはモーニングの回答ですが、「原稿料は1枚当たりのページ単価に対して支払うもので、単純に絵を描いたものに対しての値段。製作費とは異なる。」とのことでした。その結果、週刊連載は原稿料をもらっても赤字になりますので、単行本の印税で赤字を補てんしながら利益を出す形になります。

佐藤秀峰氏

──単行本を出すためとはいえ、連載で赤字は厳しいですね。これでもし単行本が売れなかったら益々きついですね。

秀峰 そうですね。出版社も多くの雑誌は赤字になっていて、単行本で利益を出す仕組みになっていますので作家も我慢してくれ、というのが彼らの主張ですが、作家は出版社の人間ではないですから。

──お話しいただいたような業界の仕組みに対する疑問が『漫画onWeb』の立ち上げにつながったわけですね。

秀峰 僕は出版社とのトラブルが多かったですから(笑)
例えば単行本というのは、まず製版費用や宣伝費などの固定費用がかかって、その他に印刷代などが刷り部数によってかかってきます。極端な言い方をすると、増刷分からは印刷代しかかからないわけですね。つまり、売れれば売れるほど原価は下がるはずなのですが、単行本の値段は変わりません。では、その分の利益が誰のものになるかというと、全部出版社の懐に入ってしまい、読者や作家には還元されていないんです。その事に疑問がありました。他にもいろいろと疑問や納得できない点があって、出版社的には「こっちは在庫リスクを抱えてるんだ、不満があるなら自分でやったらどうだ」ということになるでしょうし、自分でやればいいんじゃないかと。そう思ったのがきっかけですね。

そこから進んで、流通に乗せる費用を考えたら、雑誌ではなくwebでいいですよねという結論です。 雑誌の代わりにwebで公開して、そこから単行本とかを出してヒットする、という構図が出来るんじゃないかなと思いまして。 多くの読者に見てもらえる可能性という意味では、雑誌よりもwebのほうが大きいですよね。

佐藤秀峰氏

佐藤秀峰(さとうしゅうほう)

1973年12月8日生まれ
北海道出身
有限会社佐藤漫画製作所代表

2002年に『ブラックジャックによろしく』で第6回文化庁メディア芸術祭漫画部門の優秀賞を受賞。2010年3月には漫画家自らが作品の場を発表できるオンラインマンガ配信サイト「漫画 on Web」を立ち上げ注目を集める。現在、週刊漫画TIMESにて『特攻の島』を不定期連載中。

佐藤智美氏

佐藤智美(さとうともみ)

1976年1月15日生まれ
東京都出身

2008年に女子刑務所で働く医師の活躍を描いた『ムショ医~女子刑務所のカルテ~』を発表。週刊漫画TIMESで2013年まで連載された。単行本最終最終巻5巻が現在発売中。佐藤秀峰氏の元妻としても知られる。

佐藤秀峰さんの代表作品

ブラックジャックによろしく
ブラックジャックによろしく
(全13巻)

漫画onWeb にて無料配信中

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佐藤智美さんの代表作品

ムショ医
ムショ医
~女子刑務所のカルテ~
(全5巻)

漫画onWeb にて配信中

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